2023.08.0221:00
自転車
東京という街に生まれた。
都心ではない。
23区外の街に生まれた。
学校には裏山と呼ばれる
授業で植物や虫を観察しに行ったし
緑も豊かで穏やかな街。
夏になると
カナブンやカメムシ
名前の知らない虫が
家の扉の前によく転がっていたし
母曰く
猫ぐらいの大きさの
ネズミもいるらしい。
(これはきっと嘘。)
私はこの街が好きだ。
だけど
早くこの街から出たいとも思っていた。
音楽をはじめて
いろんな街に行くようになった。
ガヤガヤした繁華街
閑散とした商店街
夜になるとガソリンスタンドもしまってしまう道路
かと思えば
深夜でも車で通るには不便なほど
人で賑わう街。
名前も知らない街の
名前の知らない祭りを見たり
やけに水位の高い川を見たり
自分が生きてきた街から
こんな遠いところに
自分と同じように
生きて生活をして
当たり前の日常がある。
場所ではなく
ここに住む人間が街の一部
いや
街の主成分なのだなと。
当たり前なんだ。
当たり前なんだけど
すごく愛おしいことだと思った。
きっと音楽をしていなかったら
わかっていなかっただろう。
この感覚になることはなかったのだろう。
かなりインドアで
変化を望まない
旅行もハイカラなものだと思い込み
自分の街から出たいとも思っていたのに
なかなか実行に移せなかった
このぼくだからこそ
この感じたことを歌にしようと思った。
この歌を持って
また知らない街へ行く。
きっと恋しくなる。
自分の街も
だんだんと好きになっていくこの街も。